松野 亜衣子
「厨房を自動化したいけれど、新築ではないから難しいのでは?」「今ある厨房に自動調理機を追加することはできる?」と考えている方も多いのではないでしょうか。
既存厨房でも、自動調理機の導入を検討することはできます。
ただし、空いている場所に機器を置けば自動化できるわけではありません。
自動調理機を導入するためには、設置スペースだけでなく、電気・ガス・給排水、換気、搬入経路、作業動線、現在使用している厨房機器との役割分担などを確認する必要があります。
特に既存厨房の場合は、現在の設備や建物条件に制約があるため、「何を自動化したいのか」を先に整理し、必要な部分から自動化することが重要です。
この記事では、学校給食センター、病院・福祉施設、社員食堂、食品工場、ホテル、レストラン、セントラルキッチンなどを想定し、既存厨房へ自動調理機を導入するときに確認したいポイントを解説します。
既存厨房でも、条件が合えば自動調理機を導入し、調理工程の一部を自動化することは可能です。
厨房の自動化というと、新しいセントラルキッチンや食品工場を建設するときに大規模な設備を導入するイメージを持つ方もいるかもしれません。
しかし、実際には厨房全体を一度に自動化する必要はありません。
現在使用している設備を活かしながら、
など、負担が大きい工程から部分的に自動化する方法もあります。
現在の厨房設備をすべて入れ替えるのではなく、人手や時間が特にかかっている工程を見つけ、そこから自動化を検討する方法があります。
ここでいう後付け自動化とは、既存の厨房に自動調理機を追加したり、現在使用している厨房機器を自動化対応機器へ更新したりすることで、調理工程の一部を自動化する考え方です。
既存の回転釜などに後から装置を取り付ければ、すべて自動調理機になるという意味ではありません。
たとえば、次のような方法が考えられます。
つまり、既存厨房の自動化では、現在の厨房を活かしながら、必要な部分だけを見直すことがポイントになります。
既存厨房へ自動調理機を導入する場合は、「設置できるか」と「実際に運用できるか」の両方を確認する必要があります。
| 確認項目 | 主な確認内容 |
|---|---|
| ① 設置スペース | 本体寸法、作業スペース、清掃・点検スペース |
| ② 電気・ガス・蒸気 | 必要な熱源、電源容量、既存設備の供給能力 |
| ③ 給排水 | 給水位置、排水位置、必要な水量 |
| ④ 換気・排気 | 既存フード、排気量、給気とのバランス |
| ⑤ 搬入経路 | 建物入口、廊下、扉、エレベーター、段差 |
| ⑥ 作業動線 | 食材投入、取り出し、運搬、洗浄の流れ |
| ⑦ 既存機器との役割 | 残す設備、入れ替える設備、新しく任せる工程 |
最初に確認したいのが、自動調理機を設置するスペースです。
ただし、本体寸法だけを確認すればよいわけではありません。
機器の周囲には、
なども必要になります。
図面上では入っていても、実際には作業しにくいというケースを避けるため、日常の運用まで考えて確認することが重要です。
自動調理機によって、必要な熱源や電源条件は異なります。
既存厨房では、必要な電源容量を確保できるか、ガスや蒸気の供給能力に余裕があるかなどを確認する必要があります。
機器を置くスペースがあっても、設備側の能力が不足していれば、追加工事が必要になる場合があります。
給水を使用する機器では給水位置や供給能力、排水が発生する場合は排水設備も確認します。
既存厨房では配管位置が決まっているため、機器の配置変更だけでは対応できないケースもあります。
加熱調理機器を追加すると、厨房内の熱や蒸気の発生状況も変わります。
そのため、既存の換気設備で対応できるかを確認することが重要です。
厨房内の暑さや空調負荷にも関係するため、単に機器を追加するだけでなく、厨房全体の排熱まで考えます。
意外と見落としやすいのが搬入経路です。
厨房に設置スペースがあっても、機器をそこまで運べなければ導入できません。
次のような場所を確認します。
大型機器では、本体サイズだけでなく搬入方法まで事前に確認する必要があります。
自動調理機を導入すると、食材やスタッフの動きも変わる可能性があります。
たとえば、自動調理機を厨房の空いている場所へ設置できたとしても、下処理室から遠かったり、調理済み食品を運ぶ動線と交差したりすれば、厨房全体では使いにくくなることがあります。
機器単体ではなく、食材をどこから持ってきて、調理後にどこへ運ぶのかまで確認することが大切です。
既存厨房では、すでに回転釜、スチームコンベクションオーブン、フライヤー、炊飯器などが稼働しています。
自動調理機を導入する場合は、既存設備をすべて置き換えるのではなく、
を整理することが重要です。
既存厨房への自動調理機導入では、機器寸法だけで判断せず、インフラ、搬入、作業動線、既存機器との連携まで含めて確認する必要があります。
既存厨房の自動化には、大きく分けて「入れ替える」「追加する」「一部工程だけ自動化する」という方法があります。
既存の回転釜などが更新時期を迎えている場合、同じ設備へ単純更新するのではなく、自動化できる機器へ変更する方法があります。
もともと機器が設置されていた場所を活用できるため、新たなスペースを確保する方法と比べて検討しやすいケースがあります。
ただし、必要な電気容量や給排水などが変わる場合があるため、既存設備と同じ場所だからそのまま設置できるとは限りません。
現在使用している設備を残しながら、新しい自動調理機を追加する方法です。
生産能力を増やしたい場合や、特定のメニューだけを自動化したい場合に検討できます。
一方で、新たな設置スペースや設備容量が必要になるため、既存厨房では事前確認が特に重要です。
厨房全体を変えず、攪拌や加熱管理など特定工程だけを自動化する方法です。
たとえば、長時間スタッフが攪拌しているのであれば、攪拌機付き回転釜を検討することで作業負担を見直せる可能性があります。
既存厨房では、この「部分自動化」から始める方が現実的なケースもあります。
自動調理機の導入では、設備を置く場所だけでなく、導入後の人と食材の動きを確認することが重要です。
たとえば、一般的な調理工程には次のような流れがあります。
食材保管 → 下処理 → 計量 → 食材投入 → 加熱調理 → 取り出し → 盛付・包装 → 提供・出荷
この途中に新しい自動調理機を追加すると、投入する食材の運搬方法や、調理後の商品をどこへ移動するかも変わります。
単純に空いている場所へ設置するのではなく、前後工程まで含めて配置を考えることが重要です。
既存厨房を自動化するときは、「自動化できるところ」ではなく、「今、最も人と時間がかかっているところ」から探すことが重要です。
たとえば次のような工程です。
こうした工程が、自動化を検討する入口になります。
反対に、もともと人の作業時間がほとんどかかっていない工程を自動化しても、大きな改善につながらない可能性があります。
「自動調理機を入れたい」から考えるのではなく、「この作業を減らしたい」「この時間を別の作業に使いたい」から考えると、自動化する目的が明確になります。
既存厨房の場合、建物や設備条件によっては、そのまま自動調理機を導入することが難しいケースもあります。
たとえば、次のような場合です。
ただし、これらに該当するからといって、すぐに「自動化できない」と決まるわけではありません。
別の機種や設置位置、調理工程の変更、既存機器との入れ替えなど、別の方法を検討できる場合があります。
既存厨房への導入では、カタログを見ただけでは判断しにくいことが多くあります。
設置場所、搬入経路、熱源、給排水、換気、作業動線、現在使用している厨房機器などを確認することで、導入できる機器や必要な工事が見えてきます。
機種まで決めてから相談する必要はありません。
「この場所に入れられる?」「今の回転釜を更新するタイミングで自動化できる?」「どの工程なら自動化しやすい?」といった段階から確認できます。
既存設備の入れ替え時期は、厨房の自動化を検討するタイミングの一つです。
古くなった回転釜などをそのまま同等機種へ更新すれば、厨房の使い方は大きく変わりません。
一方で、設備更新に合わせて現在の調理工程を見直すと、
などを改善できる可能性があります。
設備更新を単なる「古い機器の交換」で終わらせず、これからの厨房運営に必要な設備を考える機会として捉えることが大切です。
自動調理機を導入する前には、可能であれば実際に作りたいメニューでテスト調理を行うことが重要です。
特に既存厨房では、「設置できるか」だけでなく、「現在の料理をその機器へ移せるか」を確認する必要があります。
テスト調理では、次のような点を確認します。
| 確認項目 | 見るポイント |
|---|---|
| 仕上がり | 現在の品質を再現できるか |
| 調理量 | 必要な食数・生産量に対応できるか |
| 作業時間 | スタッフの作業時間がどう変わるか |
| 操作 | 現場スタッフが無理なく使用できるか |
| 前後工程 | 投入・取り出し・盛付までスムーズにつながるか |
| 洗浄 | 調理後の清掃を含めて運用できるか |
実際のメニューを使って確認すると、「自動化できると思っていた工程」と「実際に機械へ任せられる工程」の違いが見えやすくなります。
建物の年数だけで導入可否が決まるわけではありません。設置スペース、電気・ガス・蒸気、給排水、換気、搬入経路などの条件を確認して判断します。必要に応じて設備工事を検討する場合もあります。
必ずしも厨房全体を改装する必要はありません。既存機器を残しながら特定の工程だけ自動化したり、設備更新時に一部を自動調理機へ入れ替えたりする方法もあります。
既存の回転釜に後から装置を追加すれば必ず自動化できるわけではありません。現在の設備を継続使用する方法と、攪拌機付き回転釜や自動調理機へ更新する方法を含めて検討する必要があります。
スペースだけでは判断できません。必要な熱源、電源容量、給排水、換気、搬入経路、作業スペース、清掃・メンテナンススペースなども確認する必要があります。
はい。現在のメニュー、調理量、スタッフ数、時間がかかっている工程などを整理することで、自動化を検討しやすいポイントを確認できます。最初から導入機種まで決める必要はありません。
既存厨房でも、条件が合えば自動調理機を導入し、調理工程の一部を自動化することは可能です。
ただし、確認すべきなのは機器を置くスペースだけではありません。
既存厨房では、
などを総合的に確認する必要があります。
また、厨房全体を一度に自動化する必要もありません。
現在もっとも人や時間がかかっている工程を見つけ、既存設備を活かしながら必要な部分から自動化するという考え方もあります。
服部工業では、攪拌機付き回転釜などの厨房機器に加え、厨房機器メーカーとしての知見を活かし、服部工業が提案・導入支援を行うロボット回転釜OMNIをはじめとする自動大量調理機の導入についてもご相談いただけます。
「今の厨房に入れられるか分からない」「既存設備をどこまで残せるか知りたい」「自動化したいが、どの工程から始めればよいか分からない」という場合は、機種を決める前に現在の厨房条件から整理してみることが重要です。