年末に考える厨房機器の役割とは?皆さまの声から見える2026年の厨房づくり
2025年も残りわずかとなりました。 本年も服部工業、そしてアーテックの取り組みにお心を寄せていただ...
小山 真依
飲食業の厨房における人手不足は、いまや多くの現場で日常的な課題として受け止められています。
募集を行っても十分な応募が得られず、必要な人数を確保できない状態が続いています。
その結果、従来の運営方法を維持することが難しくなっているという声も聞かれます。
農林水産省および厚生労働省が公表している資料では、飲食業の有効求人倍率が全産業平均と比べて高い水準で推移していることが示されており、人材需給のバランスが崩れた状態が続いている実態が整理されています。
こうした状況は、単なる採用難にとどまらず、厨房の業務設計や現場運営のあり方そのものを見直す必要性を示唆しています。
本コラムでは、飲食業の厨房に焦点を当て、人手不足がなぜここまで深刻化しているのかを、データと業界構造の両面から整理していきます。
※出典:農林水産省・厚生労働省「省力化投資促進プラン―飲食業―」
飲食業における人手不足の特徴は、特定の職種だけに偏っていない点にあります。
農林水産省および厚生労働省の整理では、「調理」「接客」「店舗管理」のすべての業務で人手不足が顕著であり、とりわけ店舗管理を担う店長・マネージャー層の枯渇が指摘されています。
現場では、これまで別々の役割として分担されてきた業務が、一部の人材に集中する傾向が強まっています。
つまり調理を行いながら接客のフォローに入り、さらにシフト作成や新人教育までを兼務する―こうした状態が特別ではなくなりつつあります。
店舗管理業務には、売上や原価の管理に加え、作業工程の設計や衛生水準の維持、現場の標準化といった、厨房運営の土台となる機能が含まれます。
これらの調整機能が十分に果たされない場合、業務の見直しや負荷の分散が進まず、調理・接客それぞれの現場に無理が蓄積していきます。
その結果、繁忙時間帯を中心に、現場全体で余裕のない運営が続く状態が生まれます。
このように、飲食業の人手不足は単なる人数不足ではなく、役割分担そのものが成立しにくくなっている状態として捉える必要があります。
人手不足の影響は、日常業務の中でも、とくに繁忙時間帯に顕在化しやすい傾向があります。
ランチやディナーなどのピーク時には、本来であれば役割分担によって吸収されるはずの業務負荷が、限られた人数に集中し、対応の余地が狭まっていきます。
この状態が続くと、作業の優先順位は「その場を回すこと」に偏りがちになります。
調理工程の見直しや、作業導線の調整といった改善活動は後回しになり、目の前のオペレーションを維持することが主な目的になっていきます。
また、繁忙時の負荷集中は、ヒューマンエラーの発生確率にも影響を及ぼします。
オーダーの取り違えや、仕込み量の判断ミスなど、通常であれば回避できるミスが起こりやすくなり、現場では、時間的・心理的な余裕を持ちにくい状況が続きます。
こうした負荷の積み重ねは、特定の個人の問題ではなく、業務設計そのものが現状に適合しなくなっている兆候として捉えることができます。
人手不足の影響は、採用や配置の問題にとどまらず、厨房の運営構造全体に波及していると考えられます。
飲食業における人手不足は、景気動向や一時的な採用環境の変化だけでは説明しきれない側面を持っています。
背景には、業界固有の構造的な要因が複合的に重なっていると考えられます。
まず、飲食業ではパートタイム・アルバイトの比率が高く、現場の人員構成が流動的になりやすいという特徴があります。
短期間での入れ替わりが多い環境では、技能やノウハウが蓄積されにくく、結果として教育や引き継ぎにかかる負担が継続的に発生します。
また、営業時間が長く、ピーク時間帯が明確に存在する業態が多いことも、運営上の難しさにつながります。
限られた時間帯に業務が集中するため、人員配置やシフト設計の柔軟性が求められる一方で、それを担う人材自体が不足しているという矛盾を抱えています。
さらに、飲食業では現場経験を重ねながら管理職へとステップアップしていくキャリアパスが一般的ですが、現場の負荷が高まるほど、育成や権限移譲に十分な時間を割くことが難しくなります。
このため、店長・マネージャー層の世代交代が進みにくく、管理機能の空洞化を招きやすい構造にあります。
これらの要因が重なり合うことで、人手不足は一過性の問題ではなく、業界構造に根差した慢性的な課題として固定化されやすくなっていると考えられます。
飲食業の人手不足については、国の整理においても、採用環境の悪化といった短期的な問題にとどまらず、業界構造に起因する課題として捉えられています。
現場の負荷が高い状態が続く中で、従来の運営方法を前提とした対応だけでは限界が見え始めている、という認識が制度面からも共有されつつあります。
こうした整理の中では、作業の省力化や業務の効率化は、単なる負担軽減策ではなく、中長期的に運営を安定させるための選択肢の一つとして位置づけられています。
重要なのは、特定の機器やシステムを導入することそのものではなく、業務の組み立て方や現場運営の前提を見直す視点が求められている点です。
人材確保が難しい状況が続くことを前提とするなら、従来のやり方を踏襲するだけでは、現場の負荷が解消されにくい状態にとどまります。
第1章から第3章で整理してきた課題を踏まえると、人手不足を前提とした運営設計へと視点を切り替える必要性が、徐々に浮かび上がってきます。
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ここまで見てきたように、飲食業の人手不足は、単なる人数不足というより、調理・接客・店舗管理の各機能が同時に不足し、役割分担が成立しにくくなっている点が特徴です。
繁忙時間帯の負荷が吸収できず、改善や育成に手が回りにくい状態が続くことで、現場の運営構造そのものが不安定になりやすい―この整理は、多くの現場感覚とも整合します。
この状況で重要になるのは、「人を増やす」だけに依存しない運営設計へ視点を切り替えることです。
省力化・自動化という言葉が先行しがちですが、本質は特定の機器を導入することではなく、工程全体をどう組み直すかにあります。
仕込み、加熱、盛り付け、提供までの前後関係や作業の滞留点を整理し、限られた人数でも回る形に整える。加えて、判断や微調整が必要な工程に、必要な余力を戻す。
この設計次第で、現場の負荷の偏りは大きく変わってきます。
ここで見落とされやすいのが、味や品質の安定です。
人手不足のもとでは、火入れのタイミングや段取りの微調整など、仕上がりを左右する作業が「急いでこなす仕事」になりやすく、結果として仕上がりに差が生じる場面も増えます。
これは個人の技量の問題として片付けるより、工程設計が現状に適合していない兆候として捉え、品質を守るための仕組みとして組み込む方が現実的です。
整理すると、これからの厨房運営では、次の三点が重要な論点になります。
次章では、こうした前提を踏まえたうえで、自動調理機・調理ロボットの導入が現場にどのようなメリットをもたらし得るのかを、代表的な観点から整理します。
本章では、人手不足や属人化が進む厨房において、自動調理機・調理ロボットの導入により現場にどのような変化が見られたのかを整理します。
調理工程の効率化や品質の安定、安全性への影響などについて、導入事例をもとに、資料の内容を抜粋する形で紹介します。
導入メリット5選
成功事例(概要)
実際の導入現場では、調理工程の進め方を見直す中で、調理時間の短縮や人員配置・コスト構造の再検討につながった例が報告されています。
ある食品加工の現場では、同じ量を調理する工程において、作業時間を最大で80%以上短縮した事例もあります。
より具体的な成果や導入事例を判断材料として整理した資料を、下記よりご覧いただけます。
飲食業の厨房では、調理・接客・店舗管理の各機能が同時に不足する中で、役割分担そのものが成立しにくくなっています。
こうした環境では、これまで個人の経験や勘に委ねられてきた工程を、どのように仕組みとして再構築するかが重要な論点になります。
服部工業のロボット回転釜 OMNI(オムニ)は、こうした課題に対し、調理作業を単に置き換えるのではなく、工程を再設計するための一つの選択肢として位置づけられる業務用調理ロボットです。
OMNIの考え方や活用イメージについては、以下のページで整理しています。
▼業務用調理ロボットOMNI ピックアップページ(仕様・活用例・導入事例を掲載)