松野 亜衣子
自動調理機を検討するとき、「導入費用に見合う効果があるのか」「何年で元が取れるのか」は、多くの厨房で気になるポイントではないでしょうか。
そこで分かりやすい指標として考えられやすいのが、人件費です。
しかし、自動調理機の投資効果を「何人減らせるか」だけで判断すると、実際の導入メリットを十分に評価できない場合があります。
たとえば、攪拌や加熱中の見守りからスタッフが離れられるようになり、その時間に盛付や下処理を進められるのであれば、人数そのものが減らなくても厨房全体の生産性は変わります。
ほかにも、調理品質の安定、教育負担の軽減、作業の標準化、生産能力の向上、身体的な負担の軽減など、自動化によって変わる可能性のある項目は複数あります。
自動調理機の投資効果とは、導入によって減らせるコストだけではなく、「人・時間・品質・生産能力をどのように改善できるか」を、導入費用と比較して考えることです。
この記事では、学校給食、病院・福祉施設、食品工場、セントラルキッチン、ホテル、レストランなどの大量調理現場を想定し、自動調理機の費用対効果を整理する方法を解説します。
自動調理機の投資効果とは、機器を導入するためにかかる費用に対して、導入後に得られる改善効果がどの程度あるかを考えることです。
投資効果というと「人件費がいくら減るか」を思い浮かべやすいですが、厨房ではそれだけではありません。
たとえば、次のような変化も投資効果として整理できます。
つまり、単純な「コスト削減」だけではなく、厨房全体をどれだけ運営しやすくできるかまで見ることが重要です。
自動調理機によって人員そのものを減らせなくても、同じ人数でより多くの仕事ができる、残業を減らせる、熟練者への依存を減らせるといった効果があれば、導入価値を検討できます。
自動調理機の導入効果は、「人を減らす」よりも「人が担当している作業を減らす」形で現れることが多いためです。
たとえば、これまでスタッフ1名が30分間、釜の前で攪拌していたとします。
自動攪拌によってその作業から離れられるようになっても、そのスタッフが退職するわけではありません。
そのため、帳簿上では人件費がすぐに減らないこともあります。
しかし、その30分で、
といった仕事ができれば、厨房全体では生産性が変わります。
このような効果を見落とし、「人件費が減らないから自動化する意味がない」と判断してしまうと、設備投資の評価を誤る可能性があります。
省人化は必要な人数そのものを減らすこと、省力化はスタッフが行う作業や負担を減らすことです。自動調理機の導入では、まず省力化によって生まれる時間を確認し、その結果として人員配置をどう変えられるかを考えると整理しやすくなります。
自動調理機の費用対効果を検討するときは、少なくとも次の7項目に分けて考えると整理しやすくなります。
| 項目 | 確認する内容 |
|---|---|
| ① 作業時間 | 攪拌、見守り、温度確認などを何時間減らせるか |
| ② 人員配置 | 空いた人を別の工程へ配置できるか |
| ③ 生産能力 | 同じ人数・時間で生産量を増やせるか |
| ④ 品質 | 調理品質のばらつきや、やり直しを減らせるか |
| ⑤ 教育 | 新人教育や熟練技術習得の負担を減らせるか |
| ⑥ 作業負担 | 攪拌、高温環境、長時間の立ち作業などを減らせるか |
| ⑦ 将来対応 | 人手不足や生産量増加に対応しやすくなるか |
もっとも数値化しやすいのが作業時間です。
現在、人が担当している工程を洗い出し、自動調理機によってどこまで機械へ任せられるかを確認します。
特に確認したいのは、
などです。
作業時間が短縮できても、その時間を活用できなければ投資効果は限定的になります。
そこで、「空いたスタッフが何をできるか」まで考えます。
たとえば、加熱調理を機器に任せている間に、下処理や盛付、洗浄、次のメニューの準備を進められるのであれば、厨房全体の工程を圧縮できる可能性があります。
食品工場やセントラルキッチンでは、人件費削減よりも生産能力の向上が大きな投資効果になる場合があります。
たとえば、現在の人員では1日1,000食が上限だったところ、自動化によって別工程へ人を配置しやすくなり、生産量を増やせるのであれば、新たな採用をせずに受注量を増やせる可能性があります。
この場合、「何人減らせるか」ではなく、同じ人数でどれだけ多く作れるかが重要な評価指標になります。
大量調理では、担当者によって加熱時間や攪拌方法が変わると、仕上がりにばらつきが生じることがあります。
温度、時間、攪拌などの条件を設定できる機器では、調理工程を一定にしやすくなります。
品質が安定すれば、やり直しや廃棄の低減だけでなく、複数のスタッフや複数拠点で同じ調理を再現しやすくなるという効果も考えられます。
熟練者しか担当できない調理工程が多い厨房では、新しいスタッフが入ってもすぐに同じ作業を担当できないことがあります。
調理条件を設定・標準化できれば、「誰が作るか」への依存を減らしやすくなります。
教育時間そのものだけでなく、指導するベテランスタッフの時間も含めて考えることがポイントです。
大量調理では、重い食材を混ぜ続ける、熱源の近くで長時間作業する、大量の食材を何度も扱うなど、身体的な負担が大きい工程があります。
こうした作業を機械へ任せられることも、自動調理機の重要な導入効果です。
直接金額へ換算しにくい項目ですが、働きやすさや人材定着を考えるうえでは無視できません。
設備投資では、現在の課題だけでなく将来の運営も考える必要があります。
今は必要な人数を確保できていても、数年後も同じ人数を採用できるとは限りません。
また、食品工場やセントラルキッチンでは、新規受注や施設拡大によって生産量が増える可能性もあります。
設備投資によって将来必要になる採用や増員を抑えられるかという視点も、投資効果の一つです。
自動調理機の投資効果を数字で考えるなら、最初に「現在、人が何分作業しているか」を測るのがおすすめです。
たとえば、現在の調理工程を次のように分解します。
| 工程 | 現在の作業時間 | 自動化後 |
|---|---|---|
| 食材投入 | ○分 | 人が担当する/一部自動化 |
| 攪拌 | ○分 | 自動化できるか確認 |
| 温度確認 | ○分 | 設定・管理できるか確認 |
| 加熱中の見守り | ○分 | どこまで離れられるか確認 |
| 取り出し | ○分 | 人が担当 |
| 洗浄 | ○分 | 機種によって確認 |
ここで重要なのは、調理時間と人の作業時間を分けることです。
たとえば料理が60分かかるとしても、その60分すべてをスタッフが付きっきりで作業しているとは限りません。
逆に、調理時間が短くなっても、人がずっと付き添う必要があれば大きな省力化にならない場合があります。
自動化の効果を考えるときは、料理が完成するまでの時間だけでなく、その間にスタッフが何分間その工程に拘束されているかを確認すると、実際の省力化効果が見えやすくなります。
自動調理機の投資効果を簡易的に考える場合は、「年間で得られる効果」と「導入に必要な費用」を整理します。
基本的には次のような考え方です。
削減・有効活用できる作業時間 × 人件費 × 稼働日数
+ 残業・応援人員などの削減効果
+ 品質安定によるロス低減
+ 生産能力向上による効果
= 年間の投資効果を考える材料
さらに簡易的な投資回収期間は、次のように考えることができます。
導入に必要な費用 ÷ 年間の実質的な効果 = 投資回収期間の目安
ただし、この計算では注意が必要です。
たとえば年間500時間の作業を削減できても、その500時間分だけ給与総額が減るとは限りません。
スタッフを別の仕事へ配置するのであれば、それは「人件費削減」ではなく、500時間分の労働力をほかの業務へ振り替えられる効果として考える方が実態に合っています。
| 効果 | 考え方 |
|---|---|
| 実際の人件費削減 | 残業、派遣、応援人員、新規採用などが実際に減る場合 |
| 人員再配置 | 空いた時間を盛付、下処理、洗浄など別工程へ振り替える場合 |
| 生産能力向上 | 同じ人数・時間で生産量や対応件数を増やせる場合 |
この3つを分けて考えると、自動化による効果を過大にも過小にも評価しにくくなります。
あります。むしろ人手不足の厨房では、「人数を減らす」より「今いる人数で厨房を回せるようにする」ことが重要な場合があります。
たとえば、現在5人必要な厨房を4人へ減らすことだけが投資効果ではありません。
同じ5人でも、
のであれば、厨房運営にとって大きなメリットになります。
こうした現場では、自動調理機を「人を減らす設備」ではなく、「少ない人数でも運営を続けるための設備」として評価する考え方があります。
投資効果を正しく判断するためには、導入時に必要となる費用全体を把握することも重要です。
自動調理機の導入では、機器本体以外にも条件によって費用が発生する場合があります。
そのため、機器Aと機器Bの本体価格だけを比較して「安い方が投資効果が高い」と判断することはおすすめできません。
導入後に削減できる作業と、導入に必要な費用をセットで確認する必要があります。
現在、人の作業時間が多くかかっている工程ほど、自動化したときの変化を確認しやすくなります。
たとえば、次のような厨房では検討する価値があります。
反対に、もともと人の作業がほとんど発生していない工程を自動化しても、大きな効果が得られない場合があります。
そのため、最初から機種を選ぶより、現在もっとも人手や時間がかかっている工程を見つけることが重要です。
自動調理機の投資効果は、カタログ上の機能だけでは判断しにくいため、可能であれば実際の食材やメニューで確認することが重要です。
テスト調理では、単に「料理が作れるか」だけを見るのではありません。
次のような点も確認すると、投資判断につながりやすくなります。
| 確認項目 | 見るポイント |
|---|---|
| 調理品質 | 現在の仕上がりを再現できるか |
| 作業時間 | 人が実際に作業する時間はどれだけ変わるか |
| 拘束時間 | 加熱中に別作業へ移れるか |
| 操作性 | 特定のスタッフしか扱えない機器にならないか |
| 洗浄 | 調理後の片付けを含めて負担がどう変わるか |
| 生産量 | 現在必要な量・将来必要な量を作れるか |
ここまで確認すると、単なる「高い・安い」ではなく、自分たちの厨房にとって投資する意味があるかを判断しやすくなります。
自動調理機の投資効果は、機器だけを見ても判断できません。
現在の調理時間、スタッフ数、メニュー、調理量、作業工程、設備条件によって、効果が出るポイントは変わります。
「何人減らせるか」まで決まっていなくても問題ありません。
「毎日この作業に2人かかっている」「このメニューだけ付きっきりになる」「生産量を増やしたいが人を増やせない」といった現在の困りごとから整理すると、自動化した場合に何が変わるかを検討しやすくなります。
一律には決められません。機器の導入費用だけでなく、現在の作業時間、人件費、稼働日数、調理量、残業・応援人員、生産量などによって投資回収期間は変わります。現在の工程を整理したうえで試算することが重要です。
あります。自動化によってスタッフを別工程へ配置できる、残業を減らせる、急な欠員に対応しやすくなる、同じ人数で生産量を増やせるなどの効果が期待できる場合があります。人員削減だけでなく、厨房全体の生産性で判断することが重要です。
長時間の攪拌、加熱中の見守り、温度や時間の管理など、人が長く拘束されている工程は自動化の効果を確認しやすいポイントです。ただし、実際にどこまで自動化できるかは機器やメニューによって異なります。
残業時間、派遣・応援人員、調理時間、生産量、やり直しや廃棄の量、教育にかかる時間などは比較的数値化しやすい項目です。導入前の数値を記録しておくと、導入後との比較もしやすくなります。
自動調理機は、作りたいメニュー、1回の調理量、必要な自動化範囲、使用できる熱源、設置スペースなどによって適した機器が異なります。最初から機種を決めるのではなく、「現在どの工程を改善したいか」から整理すると選びやすくなります。
自動調理機の投資効果を考えるとき、分かりやすいのは「何人分の人件費を削減できるか」です。
しかし、実際の厨房では、それだけで導入効果を判断できないケースが多くあります。
確認したいのは、
といった項目です。
自動調理機は「人を何人減らせるか」ではなく、「今、人が行っている仕事をどこまで機械へ任せ、その時間を何に使えるか」で考えると、投資効果が見えやすくなります。
一方で、実際の効果は厨房ごとに異なります。
同じ機器でも、1日の稼働回数、メニュー、調理量、現在の人員配置によって、投資効果は大きく変わります。
そのため、「自動調理機が欲しい」から機種を選ぶのではなく、まず現在の厨房でどの工程に人と時間がかかっているのかを整理することが重要です。
服部工業では、現在の調理方法や生産量、スタッフ構成、改善したい工程などを確認しながら、自動大量調理機の導入についてご相談いただけます。